郊外 / 山口晋似郎 [加筆修正版]

our_bubble_hour2008-10-26


先日の泡にてとても素晴らしい演奏をして頂いた山口晋似郎さん。
国内盤としては初となる彼の最新アルバム「郊外」が10月25日にcherry musicよりリリースされました。
そこでこれを記念して、こちらでは2回目となりますクロスレビューをやってみようと思います。

前回に続き、同じくcherry musicから発表されている、Yannick Daubyのアルバム「Fevrier」にコメントを寄せているzu-hauseさん。大変僭越ながら俺obh。
そして山口さんとレーベルtwolinesを運営し、2人による音楽ユニットであるhuvaでも活躍されている浦裕幸さんからも特別寄稿頂いております。
どうぞご覧下さい。



やまがつくった「郊外」

中学生のときからやま、そう呼んでいる。

独特の間と虚無とは無縁のある種ポジティブな暗さ、
常に自分と対峙し、何をやろうと断固肯定し続ける覚悟。

「郊外」は、そんなやまの内面がたくさん詰まったCDだ。

        • 浦 裕幸 (TWOLINESゼネラルマネージャー兼ベストフレンド)

山口晋似郎さんのニューアルバム「郊外」
言葉で表すのがとても難しいです。
聞く、と言うだけにとどまらない、触覚を喚起させられる音楽。
いや、一口に音楽って言っちゃうのも若干抵抗があります。

ヘッドフォンで聞いていると、体内にその音が物理的に沁み込んで来て、充填されているかのような気がします。
CDプレイヤーだったら?その音が鳴っている空間が浸水してるかのように、山口さんの作り出す音で満たされていきます。それこそ隅々まで。満タンです。
それは水の中に居るのに、肺の中がその水で満たされているのに、なぜか呼吸ができているような、そんな感覚。
そういえばエヴァンゲリオンコクピット内がそんな感じで表現されていましたか。

そしてその音は粘度が変わるように急に変化します。
聞いているのだから鼓膜には感度が伝わっているけど、肌や体内にまで何やら触感が生まれているような気がするのです。圧力だとか、引力だとか、いろいろ。
そんな摩訶不思議な感覚は、とても刺激的なものだけれど、不思議と静謐な質感が保たれていて、そこに山口さんの人柄が透けて見える気もするのです。

ああ。やっぱり言葉にするのが難しい。
でも未知なる物事に出会った時ってのは、そうなってしまうものなんだろう。きっと。

        • obh

山形を拠点にマイペース(なのが少々寂しい)な活動を続けるcherry music。
まだ10枚にも満たないカタログ数ではあるが、既に地にしっかりと足の着いた姿勢と匂いを存分に伺わせ、「フィールドレコーディング」をベースに良質な作品を送り出している。
そんなcherry musicが新たに提示すると同時に、フィールドレコーディングという概念に縛られない形でリリースされた山口晋似郎による、「郊外」と冠されたこの作品に触れてみる。
そこに現出する風景のギャップと合致とが交互に入り乱れ、なんとも不思議な足跡を残してくれる。
微細に響き渡る素っ気ない微ノイズの連続性からは、彼の真骨頂(?)が伺える。
例えば一曲目の提示の成され方は、自分の予想の範疇を軽々と凌駕し、レーベルの新機軸を高らかに宣言していると思うのと同時に、「らしさ」も違った角度からではあるが、否応にも感じ取れる瞬間にも度々遭遇出来た。
ハードコアと静謐な側面の、ある種の紙一重さを内包した、素晴らしい作品である。

以上になります。

また最近リニューアルされたばかりのcherry musicのsite上でもアルバム紹介のテキスト、並びに山口さんとバンド'Hello'でも御一緒されている川口貴大さん(彼も本当に素晴らしいアーティストです)からのコメントも記載されています。
ぜひチェックしてみて下さい。



山口晋似郎/「郊外」 cherry-004
定価:¥2,100(税込価格)



山口晋似郎
1983年12月30日生まれ。楽器と非楽器の演奏、作曲をする。手法にはこだわらず、 流れる時間に点を置いたり線を引いたりする「間隔」を大切にしている。 過去にはASAMO名義でいくつかの電子音楽作品を発表。 ソロ以外では川口貴大とのバンド“Hello”や浦裕幸とのグループ“HUVA”、 タブラとエレクトロニクスのトリオ“Tebla”等で活動をする。