sanctuary / ラジオゾンデ

our_bubble_hour2009-05-26


今回Our Bubble Hourにご出演頂く、青木隼人さんと津田貴司さんのデュオ、ラジオゾンデ
今年3月にSTARNET MUZIKより1stアルバム「sanctuary」をリリースされています。
大変充実した内容で、その製作過程はアルバム製作ノートに津田さん自身の手で詳しく丁寧に綴られています。

なのでこれ以上なにをといった感じではありますが、アルバム発売を記念して久しぶりとなるクロスレビューをやってみようと思います。



ユニット名に冠されたラジオゾンデとは、「気象観測気球」のことだそう。気球から眺める音を音像化するという彼等の奏でる音楽には、流行や奇を衒ったりといった不必要なモノは一切介在していない。淡々と奏でられるギターやエレクトロニクスの持続音等と呼応しながら、柔らかく旋回する音達にジッと耳を傾けてみれば、ラジオゾンデの持つ世界観に引き込まれて行く事と思います。僕がそうであった様に。

                                      zu-hause


アコースティックギターの調べや、虫の鳴き声、ギタードローン、こんなキーワードを挙げると、風景を情景を喚起させる音楽などと言った手垢のついた表現を用いたくなるけれど、不思議なものでラジオゾンデの音楽からはより物理的で具体的な何かを想起させられる。
それもそのはずこのアルバムの製作ノートを見ると、ライヴ録音による音素材をほぼ原型に近い形でエディットしているらしい。
なるほど。これはある観測記とも呼べる録音なのかも知れない。まさにラジオゾンデ。名は体を(音を)表している。
日が昇って沈んで、気温が上がって下がって、空気が様々な形で流れて、一日という時間が過ぎる。その記録。写真のような音楽。

                                        obh


ラジオゾンデは、日に2回放たれる。
湿度や気圧を測りながら上昇。
約30kmの高さで気球は破裂し、観測器はパラシュートをひらいて、地上に降りてくる。
空の上のラジオゾンデは、静寂の中にいる。
空気とともに動くので風は感じない。
動いているのは自分ではなく、世界の方だ。
ラジオゾンデの行く先は決まっていない。
偏西風にのって海へ向かうものが多いが、最初に放たれた、もとの場所に戻ってくることもある。
ラジオゾンデ(気象観測気球)について書いていたら、そのままラジオゾンデの話になった。
これは彼らの、彼らと環境の合奏による、ファーストアルバムです。

                              西村佳哲リビングワールド



今回はラジオゾンデとしてお誘いさせて頂きましたが、青木さん、津田さんお二人ともソロアーティストとして長く充実した活動を重ねておられます。
そちらの方もぜひチェックして頂きたいと思います。


青木 隼人 Guitar,Chromaharp, etc. 

ギター演奏を中心に、環境と共存する独自の音楽を展開。ライブ活動のほかにも、ギャラリーなどの展示空間にて会場や作家のために音楽を制作。2008年冬「NADA ART FAIR MIAMI」(米国マイアミ)にてサウンドインスタレーションを発表。自主レーベル「grainfield」からCD『guitar solo # 1』『guitar solo # 2』『morning july』『morning october』を発表している。(photo:かくたみほ)
http://grainfield.net/aoki/


津田 貴司 Guitar, etc. 

90年代後半よりhofli名義でサウンドスケープに基づいた演奏を行なう。360゜records、commune diskのコンピレーション参加、アルバム『水の記憶』のほか、津田貴司名義で『湿度計』(STARNET MUZIK)リリース。サウンドインスタレーションとして『湿度計』(益子STARNET RECODE)、『海の呼吸』(葉山haco)などを発表。空間との対話を重視した音楽活動を展開している。
http://d.hatena.ne.jp/hofli/